2015年6月3日水曜日

『はじまりのうた』 浮気男なんていらない

観たのは今年の4月の初めごろ。
キーラ・ナイトレイと世界一セクシーな男に選ばれたこともあるマルーン5のアダム・レヴィーンが主演なのに日本ではそんなに話題になっていなかったように思う。

マルーン5は正直あまり知らないけれど、世界一セクシーな男に選ばれたときに、すごいタトゥーの男だなという印象だった。

『ONCE ダブリンの街角で』 のジョン・カーニー監督最新作ということで、軽い気持ちで観たら思いがけずよかった。
アメリカでは、最初たった5館の限定上映だったが口コミで大ヒットし1300館まで拡大したらしい。
口コミでヒットするのは『ONCE ダブリンの街角で』と同じパターンだ。

舞台はニューヨーク。
一緒に音楽をしていた恋人デイブ(アダム・レヴィーン)が人気ミュージシャンになり、裏切られたグレタ(キーラ・ナイトレイ)が傷心のままライブハウスで歌っていたところを、家族にも見放されたろくでなしの元敏腕音楽プロデューサー ダン(マーク・ラファロ)に見いだされ楽曲を共作しゲリラレコーディングをする中で、それぞれの人生を取り戻していくストーリー。

愛する人に裏切られたグレタとダンが二股のイヤホンで、お互いのプレイリストを同時に聞きながら、NYの街を歩き続けるシーンは、目に映る景色が音楽で変わって見える体験をスクリーンを通して共有し感動した。

キーラ・ナイトレイの声がハスキーでとてもよくて、ストレートに気持ちに届く。
裏切られた恋人への思いを携帯の留守電に残した歌が切なくて心に沁みて、しばらく耳からはなれなかった。
さすがにこの歌を聴いて、新しい恋人のために作った曲を元カノに聴かせるような無神経な男も目が覚めて、会いたいと電話してくるが・・・

ばっちり化粧して美しいシャネルのモデルのキーラではなく、素のままのはかなげだが内面の強さがにじみ出る知的で才能あふれた女性を演じている。
他の映画の時には気が付かなかったが、ちょっと歯並びが悪いところがとてもチャーミングで目が離せない。

アダム・レヴィーンはこの映画にノーギャラで出演したということだが、ライブシーンの歌声には圧倒された。

ラストはグレタが何か考え込んでいるシーンで終わる。
裏切った恋人をすっぱり忘れようとしたと思えたが・・・

ダンという敏腕プロデューサーに音楽の才能を見いだされ、自信をつけ女性としても強く成長したグレタはもうデイブの元には戻らないと私は感じたが、そこは観る人の感性に余韻を残した演出なのかもしれない。