娼館のマダム・アナイス(ジュヌヴィエーヴ・パージュ)がセヴリーヌに源氏名を「昼顔」とつける。
ショートヘアの熟女、マダム・アナイスがまたシックで素敵。
まだ若いころのドヌーブは演技がもうひとつだが、美貌だけで十分見るものをひきつける。
衣装はイブ・サンローランで、何不自由ない美貌の若妻をコンサバティブなデザインの服が引き立てている。
黒のミリタリー風コートを着ているシーンのアップになった足元は、ロジェ・ヴィヴィエ。
ロジェ・ヴィヴィエは昼顔の時から40年あまりたっているのに、映画のままの四角い大き目のバックルにエナメル素材のデザインは「昼顔モデル」といわれて、完成されたエレガントなデザインは今もそのままだ。
他にもドヌーブはミリタリー調の真っ赤なコートと、黒のエナメルっぽい皮のトレンチコート、部分的にファーをあしらった茶色のトレンチコートを着ているが、どれもコートの着こなしのお手本だ。
初めて娼館に来たときに着ていたベージュのワンピースにチェーンベルトといい、ラストの有名な清楚な白い襟に白いカフスのワンピースといい、着ている服がいちいち決まっていて目が離なせない。
子供のころのトラウマが原因で性に対して倒錯した妄想を夫には求められず、欲望を抑えられないセヴリーヌは昼顔妻になった。
最初はためらっていたがだんだん慣れてきていろいろな客をとるようになる。
そして、チンピラのような客の男マルセル(ピエール・クレマンティ)に惚れられてしまい家を突き止められ押しかけられる。
このマルセルの歯が金属の差し歯で、下品でちょっとキレた感じのキャラクターを際立たせている。
そこで、何も知らない夫はピストルで撃たれ車椅子に。
撃ったマルセルは警官に射殺される。
その後、夫は友人(ミシェル・ピコリ)から真実を聞かされる。
悲惨な結末だが、最後は憑き物が落ちて聖女のようなセブリ-ヌは妄想から開放され自由になったように見えたが、夫が車椅子から立ち上がる妄想で映画は終わる。
いかにもフランス映画っぽいインモラルで倒錯と現実が入り雑じった耽美的な作品だ。
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監 督 ルイス・ブニュエル
原 作 ジョゼフ・ケッセル
脚 本 ジャン=クロード・カリエール ルイス・ブニュエル
キャスト カトリーヌ・ドヌーヴ ジャン・ソレル ミシェル・ピコリ
ジュヌヴィエーヴ・パージュ ピエール・クレマンティ
衣 装 イヴ・サンローラン