2015年5月26日火曜日

『駆け出し女と駆け出し男』 ぺったぺっただんだん

「ぺったぺっただんだん」
この映画を観た人はこの言葉を聞いたら胸にこみ上げるものがあるだろう。

江戸時代、男からは離縁できるが女からは離縁できない。
どうしても離縁を望む女が駆け込む寺が鎌倉の東慶寺であった。

家業の鉄鍛冶の仕事もしないで浮気ばかりしている夫に変わり、顔に火ぶくれを作りながら働きづめのじょご(戸田恵梨香)。
惚れているはずのダンナから離れようとする日本橋唐物問屋堀切屋の妾のお吟(満島ひかり)。
道場破りに夫を殺されたうえ無理やり祝言を挙げさせられた戸賀崎ゆう(内山理名)。

それぞれの事情を抱えた女たちが東慶寺に駆け込んだ。
離縁するために間に入っていろいろ世話をしてくれる御用宿の柏屋の人たちと、柏屋の居候で戯作者志望で医者の駆け出し男・信次郎に手助けされ、3人の女たちは新たな出発をする。

じょごは仕事ができるし、努力家で自分できちんと考えて決められる賢く強い女性。
東慶寺で過ごしながら勉強をし自分の生き方を決めていく自立した女性だ。

豪商の妾のお吟は、自分が労咳にかかって余命が少ないことを悟り、自分のみじめな姿を惚れた男に見せたくない一心で東慶寺へ来たことを医者の信次郎に告白する。
信次郎から真実をきいた堀切屋のダンナも、黙ってそれを受け入れる。
粋な男女の心意気に泣けた。こんな愛の形もあるのだ。満島ひかりがよかったねぇ。

最初、夫の仇討のために東慶寺に駆け込んだゆうは2年の間に気持ちが変わり、新しい人生を歩むつもりだったが、狂犬のようになった盗賊の男が柏屋の人たちを斬り、ゆうを取り戻すため女の子を人質に東慶寺に乗り込むが、最後は東慶寺の女たちが力をあわせて男を討った時は胸がスカッとした。

それぞれが抱える事情は重いが、大泉洋の演じる信次郎がコミカルで、立て板に水のセリフがユーモアがあり映画を面白くしている。

それから、法秀尼を演じた陽月華が映画の中で存在感を放っていた。
真面目だが人間味があって、ピシッとした院代様をオモシロ真面目に演じている。
樹木希林演じる源兵衛はさすがで、女優さんであんなに貫録と味のある役者は他に思いつかない。

昔も今も女の気持ちはおんなじ。泣けて笑って爽やかに映画館を後にできるおすすめ映画だ。


*「ぺったぺっただんだん」は本当にありがとうという意味で、労咳にかかったお吟が、看病をしてくれたじょごに言うセリフ。