2016年5月24日火曜日

【シネマ散歩】『殿、利息でござる!』は終わった後にじわじわ来るいい話。

『殿、利息でござる!』は庶民VSお上の銭バトルを面白おかしく描いた映画と思って見ると、いい意味で裏切られる作品だ。

フィギュアスケーターの羽生結弦くんがお殿様の仙台藩主・伊達重村を演じたことでも話題になっている。


250年前の江戸中期の仙台藩・吉岡宿は、藩から物資を運ぶ伝馬役を押しつけられていた。

馬は自前で買って世話をしなければならない上に、人足を雇う費用も負担しなくてはならなかった。

耐えかねて夜逃げをする者もあとを絶たない。

そんな中、決死の覚悟で吉岡宿を救うため立ち上がる人がいた。

造り酒屋の穀田屋十三郎(阿部サダヲ)が、京都から吉岡宿に帰郷した菅原屋篤平治(瑛太)と、みんなが幸せになるための方法を模索していたある日、範に金千両(現代の3億円くらい)を貸し、その利息1割を吉岡宿の労役に書かかる費用にあて、みんなの負担を減らそうと考えた。

アイデアはいいが、表ざたになれば命さえ危ない上に、そんなお金が集まるとは思えない非現実的な話だが、真剣に人々の窮状を案じていた穀田屋十三郎(阿部サダヲ)は本気でことを起こそうと奔走する。

その先はネタバレになるのであえて語らないが、思いを同じにしていた人が他にもいたこと。

そして、実はこの計画が実現するために、ある人物の長年に渡る秘密が明らかになっていく。

その話が、この話しの鍵となっている。


名誉や自己顕示欲でなく世のため人のため、見返りを求めず、口外しないという「つつしみの掟」を作り粛々と計画を遂行していく姿は、コメディタッチでエンターテイメントの強い演出の中にも、静かな感動が湧いてくる。

見ている間は泣いたり、笑ったりしながらも見終わった後で、じわじわ心に効いてくる作品だ。



この映画の原作は、磯田道文さんの『無私の日本人』の実話が元になっている。

磯田道史さんの『武士の家計簿』が映画化されたある日、見知らぬ老人から届いた1通の手紙がこの作品が生まれたきっかけとなっているエピソードがある。

その老人の吉岡宿に伝わっている立派な人々の話を本にしてほしいという内容の手紙がきっかけで、磯田道文さんは映画の中にも出てくる『国恩記』を知ることとなる。

『国恩記』は創造を絶した内容で、歴史学者でもあり古文書を冷静に読む磯田道文さんも泣かれたということだ。

詳しくはこちらをどうぞ。

本の話WEB 
『自著を語る ある老人の執念がこの本を書かせた 『無私の日本人』 (磯田道史 著)』